前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ

30、王配の裏切り

「陛下。できればもう一人……男児を産んでほしいのです」

 アリーセは断ることはできず、またリーヴェスを受け入れた。その時に気づいたのだ。彼の表情や態度は最初と変わらなかったことに。

 彼も、不憫な男だと思う。愛してもいない女を義務だけで抱き続けなければならないのだから。

 それでも……一度耐えられたことでも、今度は耐えられなかった。どうしてだろう。子どもを産んだからだろうか。

(カイ……)

「此度の戦争で、大勢の死傷者が出ました。王宮へ帰還する者はみな……」

 彼は戻ってこなかった。僅かな時間を縫って大木の下へ足を運ぶも、やはりいなかった。

(そう……死んだのね……)

 日が経つ度にゆっくりと事実を突きつけられていく。身体が怠く、寝ても疲れがとれなかった。それでも片付けるべき問題は山のようにあった。頭を働かせなくては。死んでいった者たちに報いるためにも。生まれた我が子のためにも。あの子のためなら、きっと自分は頑張れるから……。

「そんな……嘘でしょう?」

 医師は力なく首を横に振った。

「残念ながらご息女はもう……」

 小さな躯を前に、アリーセは呆然とその場に座り込んだ。

(どうして……)

 つい数日前まで元気だったのに。言葉も覚え始めて、アリーセが近づくと嬉しそうに駆け寄ってきたのに……。流行病は呆気ないほど残酷にアリーセの宝物を奪い去った。

「っ……」

 我が子の死に、アリーセの心は悲鳴を上げた。今度ばかりは誰かに縋りたかった。リーヴェスに支えてもらいたかった。それなのに……

「リーヴェス様が密かに囲っていらした女性が子を産んだようです」

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