前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ

6、予期せぬ再会

「ルティア。さっきはごめんなさいね」

 茶会の帰り。王宮の柱廊を並んで歩きながら、母が申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

「王妃殿下がせっかく話しかけてくださったから、お母様、ルティアの気持ちも考えずあれこれと話してしまったわ」
「いいの、お母様。気にしないで」

 それより、とルティアは中庭の向こうにある建物へと目をやった。

「お母様はこの後お父様のもとへ行くのでしょう? その間、王宮の図書館を見てきてもいいかしら」
「あら。あなたは来ないの?」

 父は王宮で土木関係の業務に携わっている。茶会の帰りに少しだけ顔を見せようと、朝二人が話していたのをルティアは聞いていた。

「お二人だけでお会いしたいだろうなと思いまして」
「まぁ。やぁね」

 そう言いながらも母の頬はうっすらと赤らんだ。未だ少女のように父を想う母の姿にルティアは目を細め、たまには恋人気分を味わうのもよいだろうと、あとで落ち合うことを決めて母を送りだした。

(さて……)

 ルティアは王宮の図書館へ向かう。人通りは少なく、先ほどの喧騒から解放されてほっと一息ついた心地だ。王宮へ来ること自体、緊張を伴うのは前世の記憶と重なる部分があるからだろうか。

(でも、わたしはほとんど執務室にこもって、移動する範囲も王宮内の限られた場所だけだった)

 外にも滅多に出なかった。王宮の中庭に生えていた大木の下へ、ごくたまに足を向けていたくらいだ。

(たしかそこで誰かに会って……)

 とその時、ちょうど向かいから歩いてくる人物が目についた。顔がよく見える前に視線を下げ、軽く頭を下げて通り過ぎようとする。

 だが――

「陛下?」

 柔らかな声と共に腕を強く掴まれる。反射的に顔を上げ、ルティアは息を呑んだ。
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