身代わり婚約者との愛され結婚

18.結婚と、愛と、政略と策略

「私のこと、子供だとでも? それくらい知ってるわ」

 この程度常識でしょう、と鼻を鳴らしてみるが、内心は耳打ちされた愛しい相手の名前のせいでバクバクと鼓動が早くなる。

“どこまで知っているの?”


 私とレヴィンは、ベネディクトと違って一線は越えていない。

 確かに私は隠しきれないほど彼を愛おしく思っているし、きっとレヴィンも好いてくれているだろうと思う。

 だが、互いの気持ちを口にしたことはなく人目につくところでエスコート以上の接触だってしていない。

  
 それに、むしろ自身の身代わりとして毎回私のところへ送り込んでいたのはベネディクト本人だ。

“だから、やましいところなんて少なくとも対外的には私とレヴィンに何一つないわ”

 そう自信を持って言えるし、やましいと言うならばそれは圧倒的にベネディクトの方。


 ――そう、思っているのに。

「ふぅん、体が強張ってるな。やっぱりレヴィンと来たんだろ」
「……ッ」

 平然とそう断言され、思わず言葉が詰まる。

 口先だけでも言い訳や否定をするべきだとはわかっていたが、ここまで平然と言われると何も言えなかった。

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