身代わり婚約者との愛され結婚
 そう必死に言い聞かせ、ぎゅっと両目を瞑る。
 奥歯を噛みしめすぎたせいか、少し口内に鉄の味がした。


「ま。折角なら楽しもうぜ」

 ベネディクトのその言葉にゾワリと寒気がする。
 私の首にベネディクトが舌を這わせ、ピリッとした痛みで痕を付けられたことを察した。

「や、やだ!」

 そのあまりの嫌悪感に抵抗するつもりはなかったはずが、反射的に両腕を突っ張り拒絶してしまう。

 私の反応が気に入らなかったのか、チッと舌打ちされてビクリと体が萎縮した。


「キスしねぇだけでも褒めて欲しいくらいなんだがなぁ」

 楽しもう、と言ったくせにもうその気持ちが削がれたのか、面倒そうにしながら唐突に私の胸を掴み乱暴に揉む。

 その手の感触が嫌で堪らなく、けれど萎縮してしまった私は何も言えずに震えるしか出来なくて。


“やだ、やだ……!”

 レヴィンに触れられた時はくすぐったい気持ちになったのに、服の上だからかゴワゴワとした感覚がひたすら気持ち悪い。


「やっぱりちっせぇよなぁ」

 はぁ、とため息を吐きながらそんな事を言われ、屈辱感まで与えられてカァッと顔が熱くなる。
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