身代わり婚約者との愛され結婚

20.サヨナラの約束はいらないから

「ティナ、これから何が起こっても優先順位を間違えないでください」

 まるで言い聞かせるように、私と目を合わせたレヴィンが強く言う。

 何が起こっても、という部分に少し怖くなるが、それでもレヴィンが言うならば、と私もしっかりと頷いた。


「……身代わりではなく、ティナの本物の婚約者になりたいです」
「レヴィン?」
「俺は次男で、クラウリー伯爵家のスペアです。後継者候補の一人である今はまだ婿入りはできません」

 ターンバル国の貴族には『スペア』という考えがある。
 後継者に何かあった時、代わりに家を守るためスペアである彼にもクラウリー伯爵は後継者としての教育をしているのだろう。

 どの家もだが、婿に出すのは三男以下の子供である。
 もし順当に嫡男が爵位を継いでも、スペアとして育てられた者は基本的に補佐として家から出ることはない。


“だから、どんなに想っても次期公爵の私と次男のレヴィンが結ばれることはないと思っていたけれど”


 それでも、彼は私と身代わり以上の関係を望んでくれた。
 そしてその気持ちは、私にだってもちろんあって。
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