身代わり婚約者との愛され結婚
 そう取られていてもおかしくない現状は、きっと想像以上に厳しく痛い視線を向けられるだろう。

 婚約破棄してから一気に増えたこの招待も、私を嘲笑いたいという悪意で呼ばれているのかもしれない。

 それでも。
  

“味方なんていないかもしれないけれど”

 この未来を選んだのも、私自身だから。


「有意義な情報を手に入れてくるわ」

 私は気合いを入れて、今回の主宰である男爵家へと向かったのだった。



「ご招待ありがとうございます。アルベルティーナ・エングフェルトですわ」

“ミリグ男爵家……!”


 出迎えてくれたのは、ミリグ男爵家の長女、マリエッテ様。
 真っ赤な髪を二つに結び、カールした毛先を手でバサッと払った彼女は、ニッと口角を上げる。
 
 そんな彼女にごくりと唾を呑んだ私だったのだが。

「来てくださって光栄ですわ! とてもとても嬉しいですっ」
「……え? そ、それは良かったわ」

 すぐにパアッと表情を明るくさせた彼女にきょとんとしてしまう。

「是非こちらにいらしてください! 皆さんもうお揃いなんですよ」
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