身代わり婚約者との愛され結婚

26.ただ私がそうしたいから

 さらりと告げられたその衝撃の単語に全身から血の気が引く。
 もしカップを手に持っていたら、私は落としてしまっていただろう。

「あら? 没落しかけている、と私は聞いたのですが」
「あそこは嫡男に長男が生まれたばかりだったわよね」
「これもニークヴィスト侯爵家のせいかと思うと、婚約破棄された程度では許せませんわ!」

“没落したの!? 没落してないの!? どっちなの!”


 こういうところは流石『噂話』。
 正確な情報がないことにやきもきとしてしまう。

“帰ったらジョバルサンに情報を集めて貰わなくちゃ”


 その後はまたベネディクトの悪口大会になってしまったお茶会が終了し、エングフェルト公爵家に帰ってきた私は疲れた体に鞭打って自分の執務室へと向かった。

 
「ジョバルサン、いるかしら」
「お帰りなさいませ、お嬢様」

 まるでタイミングを見計らっていたかのようにジョバルサンが現れて。

 
「レヴィンの家が没落したって噂が流れているらしいの」
「クラウリー伯爵家が、ですか?」
「裏取りをお願いできるかしら」
「畏まりました」
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