身代わり婚約者との愛され結婚
 父の執務室をノックし、娘特権でドアを開けて顔を覗かせる。
 私の姿に気付いた父の表情が穏やかだったので、深刻な話ではなさそうだと安堵した。


「今度、王家主宰の夜会が開催される。ティナも次期公爵として出席して欲しいんだが」

“夜会……”

 最近頻繁に顔を出している茶会とは違い、夜会となればエスコート役が必要だ。

 しかし兄弟も婚約者もいない私にはエスコートを頼める相手はいない。

 もちろん婚約者がいない今、エスコートの申し入れが書かれた手紙は何通か来るだろうが、レヴィン以外を選ぶつもりがない私は必然的に一人で参席するしかなくて。

“一人で夜会に出るなんて、奇異の目で見てくれと言っているようなものだわ”

 ざわつくだろう会場を想像し、少し憂鬱になってしまったのだが。


「ちなみに王城の飾り付けは、前回同様クラウリー伯爵家が担当するらしいよ」
「行くわ!」

 付け加えたようなその一言に勢いよく食い付いてしまう。

“生花で飾られた会場が好評だったらしいもの!”
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