身代わり婚約者との愛され結婚
 少しだけでも夜風に当たれば気分も良くなるかもしれないが、けれどバルコニーまで一人では歩けそうになく……


“どうすれば”

 どんどん悪くなる具合に焦りながら思わず視線を投げたのは、隣に立つ婚約者ではなく、既に背中を向け歩き去ったはずのレヴィン様だった。


「ベネディクト!」

 その瞬間、鋭い声が私に届きドキリとする。
 とっくに遠くまで歩き去ってしまったと思っていたレヴィン様が、何故か私を見てその紫の瞳を見開いていた。

「……あ? レヴィン?」

 驚いたのは私だけではなく、隣にいたベネディクトも同じだったようで、キョトンとレヴィン様に視線を移す。

 レヴィン様は一瞬だけ私の方へ手を伸ばそうとし、その手の先をベネディクトへと変えた。


「アルベルティーナ嬢の具合が悪そうだ、少し風に当たって来た方がいい」

 周りに悟られないよう声を押さえたレヴィン様。

“気付いてくれてたの?”

 隣にいた婚約者は他のご令嬢の胸を盗み見ていたのに、いつも身代わりにされている彼は私の体と、そして立場までも気遣ってくれる。
 
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