身代わり婚約者との愛され結婚
 ――なんで泣いたのかはわからない。
 ベネディクトとの間に愛も恋も、情すらもまだ芽生えてなくて。

 ただこれからの冷めた新婚生活を想像したからか、それともそんな自分を惨めだと思ったからか。


 それとも。


「ティナ」
「ッ」


 ぎゅ、と気付けばレヴィンの腕の中に閉じ込められた私は、トクトクと速い鼓動を全身に感じる。

“これは私の? それとも、レヴィンの――?”

 わかるのは、彼の腕の中がとても温かいことと、私を抱き締める腕が力強く、それでいて苦しくないように調節されていることだけだった。


「お願いします、馬鹿にされたまま私だけ何も知らずにベネディクトとの初夜なんて迎えたくない」

 私の言葉にピクリと体を強張らせるレヴィン。

「だから、婚約者である貴方が教えてください」
「……絶対、最後まではしませんよ」
「わかり――、ひゃっ」

 まるで幼い子供にしっかりと言い聞かせるような声色でそう告げたレヴィンは、抱き締めていた腕を緩め私の目元にちゅ、と吸い付く。

 そのまま舌で涙を舐め取られた私は思わず小さな悲鳴を上げた。

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