身代わり婚約者との愛され結婚
 私の質問に、ピクリとティーカップを持つ指が揺れ小さくカチンとティーソーサーが音を立てた。

「……俺とティナで、です」
「!」

“もしかして私、今デートに誘われているのかしら”

 それもベネディクトの身代わりとしてではなく、レヴィン本人から。


 驚きと戸惑いで心臓が痛いくらい跳ねる。
 落ち着こうと私もティーカップに手を伸ばしたが、レヴィン以上にガチャガチャと音を立ててしまいそうだと伸ばした手を引っ込めた。

 そして普段ならそんなミスをしないレヴィンが音を立てたということは。


“レヴィンも緊張してるのかしら”

 そう思うとこれ以上跳ねないと思っていた心臓がよりバクバクとより大きな音を立てていて。


「……行くわ」
「え」
「楽しみに、しています」


 ただオペラを観に行くだけなのに。

 なんだか彼の顔を見るのが恥ずかしく、私はティーカップに注がれている紅茶だけを見ながらそう返事したのだった。


 
「では当日に迎えに来ます」
「はい、お待ちしております」

 まだ気恥ずかしさが抜けず、足元へ視線を落としながら返事をする。
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