身代わり婚約者との愛され結婚
「……いい、夢を」

 そのまま左手を引かれた私は彼の方に一歩進むと、レヴィンの腕がそっと私の腰に回された。

「んっ」

 ちゅ、と重ねるだけの可愛い口付けがひとつ。

 彼から与えられたその口付けにぽわんとしていると、少しだけ頬に朱を差したレヴィンがふっと笑みを浮かべた。

「こんなに楽しみなオペラはきっとこの先ありません」

 離れる彼の熱が、離れた傍から恋しくて苦しい。

 
 ――どうして彼は身代わりなのかしら。


 そんな考えてはいけない考えが私の中にぽつりと芽生え、小さなシミのように心に影を落とした。


  
 
「ハンナ」
「はい、お嬢様」
「で、デートってどんな服がいいのかしら?」
「でっ、デートでございますか……!?」

 夜着に着替えながらそうハンナに問いかけると、何故か唖然としたハンナが突然ジト目になって私の前にパッと立った。


「誰とのデートですか」
「れっ、レヴィンに、その、オペラに……」
「それはクラウリー伯爵令息としてでしょうか? それともニークヴィスト侯爵令息の代理としてでしょうか?」
「く、クラウリー伯爵令息として、よ」

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