身代わり婚約者との愛され結婚
 きゅ、と握られたままの手が熱いのに気持ちいいのは、雲ひとつない晴れ渡る青空が爽やかで、けれど少し風があるからかもしれない。



「足元気をつけて」
「えぇ」

 レヴィンの手を借りて馬車から下りる。
 さすがターンバル国一と呼ばれる劇場なだけありとても豪華だった。



“いよいよ始まるのね……!”

 案内されたBOX席のソファに二人で並んで座り開演を待つ。
 馬車内と同じ距離感、けれど馬車内とは違い手は繋がない。

 距離は近いはずなのにその事実が少し寂しく感じ、そしてそんな妄想を振り払うように私はオペラグラスを手に取った。

 

 始まったオペラは、レヴィンが簡単に説明してくれた通り婚約者に見向きもされていない令嬢がヒロインの物語で、序盤にその婚約者から婚約破棄をされるシーンから始まる。

「……っ」

“婚約破棄……”

 
 婚約破棄された令嬢は全てを失いかけるが、婚約破棄の場面に居合わせた国の王太子が現れて彼女に婚約を申し込んだ。

 そこから王太子妃になるまで、決して身分の高い二人とは思えないような川遊びをしたり、遠駆けをしたりして穏やかに恋心を育む。
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