身代わり婚約者との愛され結婚
 いつも茶会で見る距離感。
 テーブルを挟んだ向かい合わせ。

 けれどここは馬車内で、そして今私たちはデートをしているのだから……

“隣同士でもいいんじゃないかしら”


 両親と出掛ける時は、必ず寄り添って座る両親を向かいの席から眺めていた。

 だからこそ、好きな人とは隣同士で座りたいと私もずっと思っていて――

「って! それだと私がレヴィンを……っ」
「俺を?」
「へっ!?」

 あっと思った時にはもう遅く、口から飛び出してしまっていた言葉。

“最近レヴィンといるとダメだわ”

 私はこんなではなかったはずなのに、彼といると淑女の仮面どころかいつも通りの私ですらいられない。

 明らかに幼子のような振る舞いだってしてしまうのに、それでも彼が受け入れてくれるから甘えてしまう。


“私は次期公爵なのだから……!”

 だから、ちゃんと自制しなくてはならないとわかっているのに。


「突然立ち上がっては危ないです」

 心配そうに手を差し伸べられると取らずにはいられず、そっと手を重ねると導かれるように引き寄せられて彼の隣に腰を下ろす。

 
“こんなの、ダメなのに”

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