身代わり婚約者との愛され結婚

11.知らなかった花言葉と知ってしまった花言葉

「少し疲れてしまいましたか?」
「え?」

 劇場を出た私たち。
 オペラは本当に面白かったし、それをレヴィンと一緒に観れたのもとても楽しかったのだが……

“婚約破棄……”

 自分は選べないその自由を手に入れたオペラのヒロインに、小さな棘のようなものが私の心にチクリと刺さっていた。
 
 
「オペラの後は少し歩こうかと思ったのですが、今日はもう帰りましょうか」

“もう帰るの!?”

 そんな私を気遣ってくれたということはわかっているが、さらりとレヴィンが言った言葉に慌てる。

「全然平気ですわっ」
「え、ですが」
「私、あのヒロインのように実は結構アクティブなのです」

“必死すぎたかしら”

 自分で言ったものの段々と不安になってきた私は、チラッと横目でレヴィンの様子を窺うと……


「――く、ふふっ」
「!」

 私に気付かれないよう必死で笑いを噛み殺している彼がそこにいた。

「ちょっ、笑うなんて!」
「すみません、あまりにも可愛くて」
「か、かわ……っ、いい、と誉めたら全てが許される訳ではないんですよっ」
「ふふ、本当に可愛いなぁ」
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