身代わり婚約者との愛され結婚
 とくとくと鳴る鼓動が熱すぎて、胸が締め付けられるようだった。


「ちなみになのですが」

 あ、とまるで今思い出したというようにハンナが言葉を重ねる。

「今日髪に飾ったアザレアの花言葉は、『恋の喜び』なんですよ」
「えっ」

“恋の、喜び?”

 教えられたその花言葉をゆっくり脳内で反芻する。
 そして。

「ハンナのばかぁッ!」

 まるで心の奥底に隠した初恋を無理やり表に出されたように感じ、私はふわふわの枕に思い切り顔を埋めたのだった。
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