身代わり婚約者との愛され結婚

12.押し花に心を添えて

 「そろそろかしら」

 ドキドキとしながらいつもポケットに忍ばせている懐中時計を確認するが、まだベネディクトとの茶会の時間までは三十分ほどある。


“まだまだだわ”

 なんて少し残念に思ってしまうのは、私が今日もベネディクトの代理でやってくるだろう身代わりの婚約者を待ってしまっているからだろう。


「レヴィンは時間に正確だから、どうせ十分前にしか来ないのにね」

 レヴィンが来るまであと二十分。
 
 いつものエングフェルト家の温室で彼を待ちながら、先日劇場で買った鑑賞したオペラのパンフレットを眺める。

“婚約破棄――……” 

 どう考えてもその決断には至れない。
 貴族に生まれた以上、優先すべきは自分の気持ちではないからだ。

“けれど、もし、もし……本当にレヴィンが私のこのを想ってくれているのだとしたら”


 ベネディクトではなく、レヴィンと本物の婚約者同士になれたのなら――……

 
「アルベルティーナお嬢様、ご婚約者の代理の方がいらっしゃっております」
「えっ、もう!?」
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