身代わり婚約者との愛され結婚

13.今だけは、夢を見させて

「それにしても、ティナがこんなに乗馬が得意だとは知りませんでした」
「あら、レヴィンだってしっかりついてこれてるじゃない!」


 出掛けようと約束していた日。
 その日もいつもより少しだけ早く現れたレヴィンを連れてエングフェルト家の厩舎へ向かった私たちは、お互い一頭ずつ連れて外に出た。

 今日の目的地はエングフェルト家領地の奥にある自然豊かな草原だ。


「てっきり一緒に乗れると思っていたのですが」
「ふふ、もし二人乗りするなら私が手綱を握るわよ? だって私の方が上手いもの」
「そんなこと、と言いたいですが……本当にそうなりそうですね」

 私は割りと本気だったのだが、その言葉を聞いたレヴィンがくすくすと笑う。

“もうっ、信じてないわね?”

 なんだか悔しく感じた私は、徐々に馬のスピードを上げた。


「これならどうかしらっ」
「ちょ、ティナ!?」

 私がスピードを上げたことに気付いたのか、レヴィンも慌てて私の後を追いスピードを上げる。


 そのまま私たちは湖のほとりまで馬で駆けた。


「そんなにスピードを出すなんて」
「追い付けなかった負け惜しみかしら」
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