アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「…今日は何なんだ?」
 
また間違い探しか?作ってきたのか。授業中に。

すると。

「今日はね、迷路作ってきたんだー」

あー、成程。それも定番だな。

俺も書いたことあるよ。小学校低学年のときにな。

高校生にもなってやることじゃねーだろ。

「はい、悠理君やってみて」

「…」

期待いっぱいの顔で、こちらを見つめるお嬢さんを。

俺は、じっと見つめ返した。

…言いたいことは色々あるが。

「…あのなぁ、あんた…。折角の休日だっていうのに、他にやることはないのか?」

「ほぇ?」

ほぇ、じゃないんだよ。

返事に困ったら、すぐ首を傾げるんだから。

「課題をやるなり、授業の予習復習をやるなり…。やるべきことは色々あるだろ?」

「…」

「まぁ、勉強したくないなら、それでも良いけど…。だからって自由帳に迷路書く時間があったら、他のことが出来るんじゃないか?」

「…他のことって?」

それは…色々だよ。

「そうだな…じゃあ、友達と遊びに行ったらどうだ?」

俺を遊び相手にするんじゃなくてさ。

同じクラスの友人と、仲良く買い物にでも出掛けたらどうだ?

「でも、悠理君だってお出掛けしてないよ」

「俺は家事があるから、遊んでる暇がないんだよ」

俺はこの家に、お嬢さんの面倒を見る為に来てるから。

家事を放り出して、遊び呆ける訳にはいかないけど。

だけど、お嬢さんは違うだろ。

「子供の遊びじゃなくて、たまには年相応に、高校生らしい時間の使い方をしろよ」

「…例えば?」

えっ。

「高校生らしい…ってどんな感じ?おままごとじゃないの?」

おままごとではないだろ。断じて。

「それは、その…。…えぇと、映画館に行ったり、カラオケやショッピングに行ったり…」

俺は、雛堂のアドバイスを思い出しながら言った。

それから…。

「あ、そうだ。スイーツを食べに行ったりさ。それこそ、友達を誘って」

「…」

「俺を遊び相手にするんじゃなくて、たまには違うことをしてみろよ」

よし、言ったぞ。

この一週間、毎日思ってたことをようやく言った。

さぁ、これに対してお嬢さんはどう出る?
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