アンハッピー・ウエディング〜前編〜
ワニエリアの次にやって来たのは。

「こちらは、トカゲ・カメレオンエリアです」

「ようやく来た…。唯一の癒やしエリア…」

車椅子の男性が、ボソッとそう呟いていた。

最初のヘビエリアも、さっきのワニエリアも、必死に目を逸らしてたもんな。

爬虫類苦手なんだろうか。

じゃあ、何故ここに来た…?

「トカゲとカメレオンですか…。戦い甲斐のない相手ですね」

橙乃さん、何で残念そうなんだ?

「そう言わず。確かに、このエリマキトカゲや、こちらのカメレオンは戦い甲斐がありませんが…。その向こうに、良いライバルになりそうな相手がいます」

「ライバル?何者ですか」

「ご覧ください、コモドオオトカゲです」

うわっ、びっくりした。

トカゲって言うから、たまに日陰とかでちょろちょろしてる、手のひらサイズのアレだとばかり思っていたのに。

巨大な檻の中に、ワニみたいな大きさの灰色の生き物がいた。

これがトカゲ?

「ほーん、コモドオオトカゲ…コモドドラゴンって奴か。なんか漫画で読んだことあるわ。実物初めて見た」

と、雛堂。

こんな種類のトカゲがいるんだな。でかっ…。

「此奴にも毒があるので、噛まれないようにくれぐれも注意して戦ってください。遠距離から攻撃して弱らせるのが良いでしょうね」

どうやって遠距離から攻撃するんだ?

こんなものに襲われたら、俺はもう逃げるよ。逃げの一択だ。

誰が戦うかよ。

「とはいえ、このエリアの目玉はこのコモドオオトカゲだけで、他の動物は小さくてつまらないですからね。早く次に行きましょう」

「そうですね。戦い甲斐がなさそうです」

「…」

すたこらさっさ、と歩いていってしまう美人アンドロイド二人。

…あの人達は何なんだ。爬虫類に勝って何がしたいんだ?

「…えっと、ごめん…」

車椅子の青年が、申し訳無さそうに謝ってきた。

あんたは、あの二人の保護者か。

別にあんたが悪いんじゃないから、謝らなくて良いんだって。

普段から振り回されてるんだろうなぁ…多分。

分かるよ、気持ちは。

俺も、いつも寿々花さんの自由奔放ぶりに振り回されてるからな。

こんなところで出会わなければ、良い友人になれたんじゃないだろうか。
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