アンハッピー・ウエディング〜前編〜
その後、俺はお土産屋さんをぐるりと一周し。

件のワニクッキーと、デフォルメされた可愛らしいカメレオンのハンカチを購入した。

これ、寿々花さんへのお土産な。

色々見て回ったけど、カメレオンならまだ…可愛いかなと思って。

ヘビのキーホルダー買って帰る訳にもいかんだろ?

悲鳴あげられたら困るしな。

つーか、寿々花さんはあくまで俺が動物園に行ったものだと思ってるのに。

買ってきたお土産は、ワニクッキーとカメレオンハンカチ…。

果たして、今日のことをどう説明したものか…。

考えるだけで、頭痛くなってくるよ。

「あのー…。君達はその、制服を着てるみたいだけど」

「あ、はい?」

お土産を買って、ロビーで雛堂達が戻ってくるのを待っていると。

車椅子の青年が、俺に話しかけてきた。

唯一まともそうな人だ。

「授業の一環で、調べ物をしに来たとか…?」

「あ、いやそうじゃなくて…。…えーと、遠足です…」

「え。遠足…?こんなところに?」

こんなところにって、言っちゃったよこの人。

「あ、ごめん。そういう意味じゃなくて…あんまりその…遠足で来るような場所じゃないと思ったから」

「そうっすね…。俺もそう思うんですけど…。まぁ、ちょっと変わった学校なんで、うち…」

「そ、そうなんだ…」

まさか、動物園だと偽られて連れてこられたとも言えず。

「えっと…何だか、終始うちの瑠璃華さんと琥珀さんが振り回しちゃって…ごめんね」

また謝られた。

やっぱり、あんたあの二人の保護者的な役割なんだな。

「いえ。賑やかで良かったですよ」

「普段、こんな風に普通の人と親しく話をする機会はないから…。二人共楽しかったんだと思うよ」

そうなのか。

そういや、俺もそうだな。

家では寿々花さんと、学校では雛堂と乙無と過ごす時間が多くて。

それ以外のクラスメイト達とは、ほとんど接点ないからな。

水曜日の園芸委員の仕事で、小花衣先輩と雑談するくらいか?

「ありがとうね、瑠璃華さんと…琥珀さんとも、付き合ってくれて」

「いえ、こちらこそ…。色んなこと教えてもらえて興味深かったです。…あんまり役に立ちそうにない知識でしたけど」

しまった。つい本音が。

「これでも、かなりマシになった方なんだよ…。最初に来たときは、ヘビと戦うんだって、ナイフやロープを持ってきてて…」

と、車椅子の青年は遠い目で呟いた。

「案の定琥珀さんも今朝、迷彩服着て、偽装用のネットまで持ってきててさ…。駅前で着替えてから来たんだよ。本当、腰抜かすかと思った…」

「…」

…苦労してんだなぁ、あんた。マジで。

やっぱり、こんなところで出会わなければ、きっと良い酒が飲めたと思うよ。
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