黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
成長期から胸が大きくなり女性らしい身体つきになった。学生の頃には痴漢が後をついてきたり、追いかけてきたこともある。
電車でもしつこく触られたりしたから、混み合う時間は乗らないようにしたり、女性専用車両を利用していた。
でも安心できるはずの女性専用車両にも、たまにわざとニヤニヤしながら着いてきて乗って来る男性がいて、私の男性嫌いはより深刻になってしまった。
社会人になり仕事でも男性と接することが必然的に増えて、紳士的で優しい人も多く、症状は徐々に軽度にはなってきた。
不審者のような人ばかりではないことも当然分かってはいる。
でも慣れていない人にはまだ怖さがある。

「ミオ様…」

「あと、皆様とは年齢が違い過ぎますので…」

「え？ ミオ様は私と同じくらいの年齢ですわよね？」

ソフィー様がキョトンとした顔で私を見る。

「ええ！？ まさか！」

私を不思議そうに見ている親子とシエナ様。

「私は２５歳でした。前聖女の詩乃様の手紙からすると、聖女の身体はこの世界で新しく創られても年齢は前世の年齢からとの話です。私は１０年間眠っていましたので、すなわち今は３５歳です」

「……」

「眠っていたので精神的にはまだ２５歳のままなのですが、若い皆様とは親子程年齢が離れていると思います。私にとっては恋愛というよりは息子と考えてもおかしくはありません」

「……」

話が理解できないとばかりに首を傾げたまま、王妃様とソフィー様は動かなくなってしまった。
シエナ様も首を傾げていた。

それに結婚なんてしても…。
前世の嫌な記憶を思い出す。

「ッ！」

……あれ？ また目眩がしてきたわ。
一気に喋り過ぎたかな？
私は額を片手で押さえた。

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