14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 腕は客席のドアの前で離され、大和さんが開けて促される。

 座っていたあやめは、ドアが開く音にこちらへ顔を動かしてから立ち上がった。

「あやめ、彼が忽那大和さん。大和さん、あやめです」

 彼女の前に立って、ふたりを紹介する。

 あやめは挑戦的な目つきで大和さんを見遣る。

「君が宮崎あやめさんか。紬希、ふたりで話してもいいか?」

「ど、どうぞ」

 あやめは大きなため息を吐いている。

 彼女は大和と話をするのが、めんどくさいのだろう。

「レストルームへ行ってくるね」

 ふたりから離れるが、何を話しているのだろうと気になる。

 綺麗とは言い難いレストルームの鏡に映る自分を覗き込む。

「そっか~、褒めるほど気に入られなかったみたい」

 独り言ちてハッとなる。

 やっぱり私、大和さんの反応が気になるんだ。彼に触れられたり、一挙手一投足すべてに心が弾むのだ。

 数分して戻ると、あやめは先ほどよりも表情は柔らかくなっていた。

 まだ話をしているので、ドアのところで終わるのを待っていると、金髪にした若手芸人と黒髪の相方のふたりが目の前に立って視線を遮られる。

「君、観てくれていたよね。漫才好きなんだ。これから飲みに行かない?」

 獲物を狙うようなギラギラした目つきだ。

「俺たちのおごりでさ」

「いえ、用があるので」

「用事? そんなの良いから行こうよ。君、可愛いし」
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