14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 刻一刻とアヤメのお見合い相手に会う時間が近づいている今は、すでに鼓動はドキドキと暴れており、心臓が口から飛び出そうなくらい緊張している。

 これまで何度も引き受けてしまったことを後悔している。

 震える足を奮い立たせて、五つ星ホテルのゴージャスなロビーへ歩を進めると、エレベーターを探す。

 すごいホテル……こんなところで会うなんて、さすがあやめのお相手だわ……。

 エレベーターに乗り込み、あやめから聞いていた最上階の表示パネルの横にイタリアンレストランの名前を見つけてタッチする。

 エレベーターに乗ったのは私だけで、一度も止まることなく最上階へ到着してしまった。

 気持ちを落ち着かせる時間なんてなかったわ。

 震える足でエレベーターを降りて一歩進んで立ち止まる。

 二の足を踏みたくなる心をなんとか鼓舞し、深呼吸をしてから十メートルほど先に見えるイタリアンレストランへ向かった。

 入り口に立つ黒いスーツに蝶ネクタイ姿の初老の男性に案内されてレストランの奥まったドアが開けられた。

 もう逃げられない。あやめのために頑張ろう。

 下唇をキュッと噛んで、初老の男性のあとに入室した。

 六人掛けの長方形のテーブルの、ドアに近い窓際の席に男性が座っていた。

 電話をかけていたようで、スマホをスーツのポケットにしまってから振り返った。

 お見合い相手を見た瞬間、暴れていた心臓がドクッと跳ねた。
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