14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 あやめ、こんな素敵な人だなんて聞いてないわ……まあまあって言っていたじゃない……。

 今のこの状況に、額から汗が流れ出そうだ。

 大きな窓から東京のシンボルタワーが大きく目に飛び込んでくるが、景色を楽しむ余裕がない。

「君が宮崎あやめさん……?」

 男性が一瞬私に目を見張ったあと、椅子から腰を上げた。

「ええ。宮崎あやめよ。あなたが忽那さん?」

 真っ赤な嘘を高飛車に言ってのける。

 私、うまく言えてる?

 目の前の男性が稀に見る極上な男性だとしても、何としてでも彼に嫌われなくてはならない。

「……そう」

 相手のイケメンは口ではわかった素振りだが、眼差しは疑っているような視線に、無意識に背筋が伸びる。

 さすがにこの姿ではあやめというには無理があったかも……。

「どうぞ座ってください」

 彼は私のうしろで待機していたレストランスタッフに頷くと、奥の椅子が引かれ、そこへぎこちない動きで歩を進めて椅子に座る。

 それから彼も腰を下ろした。

 はぁ……あやめに同情なんかして引き受けなければよかった。

 彼女は『好きな男性がいるから、お見合い相手と結婚なんて絶対に考えられない』と、鼻を真っ赤にさせて号泣したのだ。
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