14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 オフィスには大和さんしかいなかった。お昼休みだから出ているのかもしれない。

 ベージュのコートを脱いで、ソファに歩を進めて背もたれに掛ける。

 センターテーブルに四角い漆塗りの箱がふたつ用意されていた。

「さっぱりした方が食欲も出ると思って、和食にしたんだ」

 お茶も用意されていて入れたばかりのようで湯気がたっている。

「すごい豪華……」

 彼が蓋を開けてくれる。

「いつもは役員会議のときくらいしか食べていないからな。今日は特別だ。食べよう」
いくつかの陶器に盛られたおいしそうな料理に、ひょうたんに象られた五目寿司もある。

「いただきます。私から連絡がなかったらどうしていたんですか? すぐに頼んで用意できるものじゃないですよね?」

「いちおうオーダーしておいて、紬希が無理だったら田中さんが食べただろう」

「田中さん?」

 箸を止めて首を傾げる。

「秘書だよ。この前もいただろう?」

「田中さんに申し訳ないことをしちゃいましたね」

「元々、紬希のために頼んだんだから気にする必要はない」

 老舗料亭の極上のお弁当をゆっくり味わって食べたので、おなかが満たされるとあと十分でお昼休みが終わる時間になっていた。

「ごちそうさまでした。もう行きますね」

「ああ。無理せずにな」

 大和さんがソファの背に掛けたコートを手にして渡してくれる。

「はい。じゃあ、行きますね」

「紬希」

 一歩近づいた大和さんは、名前を呼ばれて「え?」となった私のポカンと口を開けた唇に軽くキスした。
< 173 / 208 >

この作品をシェア

pagetop