14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
今日、目の前に現れた紬希はドへたくそな演技で、見合い相手宮崎あやめのフリをしていた。
帰国後、彼女の調査を依頼し、昨日調査報告書が届いていた。
驚くことに、彼女はわが社の総務課に二年前から勤務していた。
神様が俺たちを引き合わせてくれたに違いないと思わせるような偶然。
しかし、調査報告書に載っていた写真は想像よりかけ離れていた。中学一年のとき、彼女は美少女と言っても過言ではなかった。
履歴書の写真はあの頃とは打って変わって、黒縁眼鏡に髪の毛をひとつに結んでいる。人目を避けるような外見で、今と同じだ。
あんなに屈託なく笑顔がかわいかった紬希だったのに。
宮崎あやめのフリをして現れたのには理由があるのだろうが、食事が終わるまで紬希の演技に付き合うことにした。
どうにも高飛車な態度は似合わず、時々素の表情が伺えて面白かった。
彼女は俺が公園で出会った大和とは夢にも思っていないみたいだ。いや、あのときの約一カ月のことなどすでに忘れ去られているのだろう。
紬希は出発前日の遊園地へ行く約束を破り、来なかったのだ。俺は彼女に淡い恋心を抱いたが、紬希は違かった。
あの日、なぜ来なかったのか、ずっと聞きたかった。
今の彼女は報告書によれば、父親の転勤で両親は大阪で、大学四年生の頃から江東区のワンルームマンションでひとり暮らしとあった。
恋人の存在もこの一カ月間の調査では見当たらなかったと書かれてある。
目の前でジェラートを食べている紬希はおいしそうで、おにぎりを食べたときの表情と重なった。
そこへ――。
「君は宮崎あやめではなく別人だろう? 俺の見合い相手は?」
鋭く核心をついて言い放った。