14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「な、何で見ているんですか?」

「いや、おいしそうに食べるなと。甘くない?」

「とってもおいしいですよ。忽那さんは甘いものが苦手なんですか? そう言えば、レストランでデザート食べていなかったですよね?」

「甘いものは苦手なんだ。唯一食べられるのがあったが、彼女がそれを作ってくれるかわからない」

 そう言って、忽那さんはコーヒーを飲む。

「彼女って、いるんじゃないですか。それなら――」

「恋人って言う意味じゃないよ。さてと、自宅の住所を教えてくれ」

 忽那さんはカーナビを操作して、私の住所を入力した。



 マンションの前まで送ってくれて、忽那さんは「また連絡する」と言って去って行った。

 時刻は十六時になろうとしていた。

 部屋に入って「はぁ~」と脱力させつつ、洗面所へ行って手を洗う。

 ふと顔を上げて目の前の鏡に映る自分を見る。

「こんな私のどこが良くて恋人のフリをさせるの? 忽那さんとどう見ても釣り合わないのに」

 黒縁眼鏡を外して、ぼさっとしている前髪を手で梳かすと顔の輪郭が出る。

 もう二度とセクハラをされたくないから、この姿になっているのに、忽那さんの前では通用しないみたいだ……。

「あ!」

 彼の方から宮崎家に断ってもらうよう念を押すのを忘れてしまった。

 でも今のところ、私に偽物の恋人の役をさせようとしているのだから大丈夫かな……。

 根が真面目なので、夜になっても心配になってきた。

 あやめの目的は忽那さんから断ることだものね。
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