14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
『突然だけど今日、恋人のフリを頼みたい』

「え? きょ、今日ですか?」

『ああ。空いてる? 昨日、特に予定はないと言っていたよな?』

 あ……そう言えば……そんなことを帰りの車で話していた。だけど、大抵の休日は、って話で今日予定がないとは……。

 困惑しながらも、会ってあやめの件を確認するためにOKしようと口を開く。

「空いています」

『三十分で迎えに行く』

「さ、三十分ですか?」

『支度に時間がかかる? それなら下で待っているから終わったら来て』

 今はほとんどメイクをしていないので、それくらいでも問題ない。

「大丈夫です。では、三十分後に降りますね」

『OK。じゃあ、あとで』

 忽那さんはテキパキと通話を終わらせた。


 昨日と同じく真っすぐな黒髪をうしろでひとつに結ぶ。

 まだ紫外線が強いので顔には、UVクリームを塗るだけに。
 お見合いの昨日は一応軽くメイクをしていたが、特に気に入られたいとも思っていないのでおしゃれをする必要はない。

 部屋着から、ベージュの半袖のカットソーと黒のスカンツに着替える。

 ショルダーバッグに必要なものを入れてから時計を見ると、約束の五分前だった。

 洗面所に置いていた黒縁眼鏡をかけてから、鏡を覗き込む。

「こんな地味な女、やっぱり恋人のフリなんて無理があると思ってくれればいい」

 パンプスを履いて部屋を後にした。
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