14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「御曹司で良い人でも、私はテツヤを愛しているの。テツヤしか目に入らないの。お金なんて関係ないわ。本当は今すぐ家を出て彼と同棲したいんだけどね、お父様がテレビ局のお偉いさんと仲が良いから、万が一テツヤが出禁にでもさせられたらと思うと行動が出来ないのよ」

「そんなところまで……」

 同棲を考えていたなんて驚きで、ポカンと口を開けたままで彼女を見つめる。

「驚かせちゃった? テツヤが早く芸人グランプリでいい所まで行けばいいんだけどね。お父様を納得させるには、ショーレー
スに優勝しなくちゃ無理そうね」

「あやめ、応援するよ。高校から見ていたけど、そんなに好きになった人いないものね」

「ありがとう。まずはテツヤのあげまんになるわ」

「あげまん?」

 聞きなれない言葉に首を傾げる。

「男性の運気を上げる女性のことよ。今は言わないかしら」

 そう言ってあやめは「ふふっ」と笑う。

 そこへ前菜と白ワインが運ばれてきた。
 カニの身のサラダをパイ生地の上に乗せたものや、アボカドクリームがかかったクリスピーポテトなど、白ワインにあうおつまみになる前菜だ。

 私たちは乾杯をしてグラスに口をつける。
 キリッと冷やした白ワインは喉を通って、かぁっと胃の中で熱くなる。

「なかなかおいしいわね」

 あやめは満足そうにグラスを置いて、一口サイズのカニパイを食べる。

「ね、忽那さんの無茶ぶりはどうなった?」
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