14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「一度、お見合いの翌日に遊園地へ連れて行かれたの。ニューヨークに出張するとメッセージをもらってから、音沙汰なしよ。もうお役御免になったかもしれない」

「ってことは、約一カ月? それでいいのよ。お見合いに行ってもらって罪悪感があったし、紬希の時間を忽那さんに取られないで済むなら良かったわ」

 本当にそれで良かったのかなと、スッキリしない。

「どうしたの? 御曹司が好きになったの?」

「え? そ、そうじゃなくて……」

「今の紬希は寂しそうな顔をしていたわよ。会いたいのなら、電話をかけてみればいいじゃない」

 あやめの言葉に何も言えない。自分の気持ちがわからないのだ。

 アサリのパスタがテーブルに置かれる。

「紬希は異性に対して線引きしちゃうでしょう? この先、恋人を作らないなんて寂しいじゃない。でも、強要しているわけじゃないの。紬希の気持ちを尊重するわ。冷めちゃうわね。食べましょう」

 私がまだ二度しか会っていない忽那さんに惹かれている?
 わからないわ……。

 自問自答しても答えは出てこない。

 結局のところ、忽那さんがもう私に会いたくなければ誘われないのだ。


 大和さんから連絡があったのはその週の金曜日の夜だった。

 帰宅して帰りがけに買ってきたコンビニのお弁当を食べようとしたところに、ローテーブルの上に置いたスマホが着信を知らせた。
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