14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 前回も食事代を払わせてもらえなかったし、今回もきっとそうだろう。

 朝食は食べてくる?
 家族と住んでいるから食べてくるかもしれないけれど、いちおうおにぎりを持っていこうか。

 冷蔵庫の中はほとんど食材がないが、瓶に入ったほぐされたシャケと塩昆布くらいならあるから、ご飯を炊けば作れる。

 とりあえず作って持っていこう。
 気持ちの問題だしね。


 翌朝、出社する時間と同じに目を覚ますと、部屋の中が炊き立てのご飯の匂いがしていた。

「さてと、着替えてからおにぎり作ろう」

 前日、黒いワンピースにしようと決めていたが、ふとクローゼットにかかっている彼が買ってくれたレモンイエローのワンピースを着ることにした。

 半袖なので、グレーのカーディガンを羽織れば寒くないだろう。

 着替え終わると、狭いキッチンへ立つ。

 シャケと塩昆布を三個ずつ作り、合計六個を保冷バッグの中へしまう。昨晩、電話のあとにコンビニへ行ってペットボトルのお茶を買ってきたので、それも一緒に保冷バッグの中へ入れた。

「わ、あと十五分!」

 洗面所へ行き、UVクリームだけつけて、黒縁眼鏡をかけようとしたところで手が止まる。

 大和さんの前ではかけなくてもいいか……。

 この二年間、彼に眼鏡を奪われたとき以外、ずっと肌身離さずだった。

 また取られて壊れたりすると困るし……。

 黒縁眼鏡は洗面台に置いて部屋に戻った。
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