14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 そんな計画をとは知らず、責めた顔を戻して謝る。

 彼は苦笑いを浮かべて「ま、仕方ないな」と、ドアのロックを解除すると、外側からドアマンに開けられた。

 ロビーは真紅の絨毯が敷かれラウンジのようなスペースが見えて、老齢の品の良い男女がお茶をしている。

 その他にも身なりのきちんとした男性や、上質なワンピースに身を包んだ女性が談笑しながらエントランスに歩を進めている。

 フロントで大和さんは名前を告げると、受付の女性が「お待ちください」と、バックヤードに消えてすぐにチャコールグレーのスーツ姿の初老の男性が現れた。

「忽那様、お待ちしておりました。総支配人の戸山(とやま)と申します。本日はありがとうございます。忽那社長はお元気でございますか?」

「はい。紅葉の時季に宿泊したいと言っていました。母から予約が入るかと思います」

「かしこまりました。特別室はいつでもご用意できますので。それではご案内させていただきます」

 総支配人の丁重な対応から、やはり大和さんは御曹司なのだなと再認識する。愛車や身に着ける小物などは超高級なものだけど、屈託なく遊ぶ姿は親しみを覚えるものだったから気にしないほどになっていた。

 そんな彼が連れている私はちゃんと恋人に見えている?

 もしかしたら、総支配人は私を連れてきたことを大和さんのご両親に話をするかもしれない。

 それがここへ来た彼の目的?
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