貴方はきっと、性に囚われているだけ

デートのお誘い

 そんなこんなで、連日お昼は屋上で琉斗と海翔、花梨の四人で取ることになった。雨の日は教室まで来てくれて、四人で食べている。時折、琉斗が他の男子生徒に視線を送っているが、なんなのだろうと気にはなるが、それでも花梨以外と楽しく食事がとれる楽しさの方が勝り、琉斗との距離が近くなってしまっても気にすることは減ってきた。
 意外なことに、ファンクラブもあると聞かされていたから苛めの対象になるかもしれないと危惧していたが、それもなかった。下駄箱に嫌がらせを受けることもなく、寧ろ男子生徒からの告白の手紙が増えたのは何故なのか、それが気がかりだった。下校時間になると、必ず琉斗が迎えに来て本当に家まで毎日送ってくれている。これには何だか申し訳なさが込み上げてきている今日この頃だった。


「海翔先輩、デートをお願いしたいです」
「……どこがいい?」
「やった! ゲームセンターとかどうですか?」
 何時ものように屋上での昼食。今では三人の分のおかずも作るようになった一葉は皆におかずを分けていた。そんな中、花梨と海翔はデートのプランを立てている。そんな時、ふと琉斗と視線が合った。
「ねえ一葉。僕たちもデートしようよ」
 何時の間にか呼び捨てになっていた呼び方。未だに慣れず少し頬が赤くなる。って、ん? デート?
「デート、ですか? 誰と誰が?」
「だから、君と僕がだよ」
 その言葉に、目が点になる。まさかの花梨たちに触発されて、デートのお誘いをするとは思わなかったからだ。
「その、私と、ですか?」
「うん」
 嬉しい言葉だが、周りの視線が痛い。痛すぎる。苛めはないにしても、監視と言わんばかりの周りからの視線は今も健在で、その視線が背中にザクザクと突き刺さる。
「嫌かい?」
 眉尻を下げ首を傾げながら訊ねる琉斗には申し訳ないが、こればかりは断るしかない。
「私と行っても楽しくないですし……」
「それは僕が決めることだよ、一葉。僕は君と行ければどこでも楽しいと思ってる。それでも駄目かい?」
 しんみりした口調で問われ、一葉は言葉に詰まる。毎日、家まで送って貰っているお礼だとすれば、いいのではないか? そう、自分に思い込ませた。
「その、毎日、家まで送ってくださってますし……そのお礼で良いなら……」
「本当かい!」
 目を輝かせ声を弾ませる琉斗に、思わず心地よい気分になる。そんなにデートがしたかったのだろうか。
「じゃあ、連絡先を交換しよう! これで何時行くかも決められるしね」
「は、はいっ」
 スマートフォンを取り出し、連絡先を交換する。それだけで、何故か浮足立ってしまった。
「日付と場所を決めたら連絡するよ。それまで楽しみにしててね」
「はい」
 琉斗の少年のような側面が垣間見れ、一葉は嬉しくて仕方がなかった。
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