ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 午後七時十分

 私は今、初めて食べるメキシコ料理を黙々と食べている。

 メキシコ料理はタコスだけではないのだと私は初めて知った。
 この鶏のスープ、美味しい。
 スープを頼んだのにスープに入れるサイドメニューがたくさん付いてくる。お得だ――。

 メキシコのタコスは小麦粉ではなくてコーン粉なのか。しかも小さい。十二センチ位の薄いタコスを二枚重ねて食べる。理由はちぎれたら手が汚れるからだと。なるほど、と思った。
 おにぎりに海苔を巻くようなものなのだろう。
 アボカドのワカモレもサルサソースも美味しい。市販のものとは全く違う。
 コロナビールはライムが飲み口に刺さっているが、料理もライムを掛けて食べる。スープにも掛ける。テーブルにライムが、いっぱい――。

「葉梨、美味しい」
「そうですね、美味しいですね」

 微笑む葉梨に私も微笑んだ。
 葉梨はよく食べている。食欲があるのなら大丈夫だろうと思った。

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