ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第23話 果し状とTLコミックと霞ヶ関文学と

 十一月十二日 午前十一時五分

 私は今、葉梨の実家で葉梨ヒストリーの続きをご両親から聞いている。

 ――中学一年生のゴールデンウィークから、スタート。

 六月十五日に葉梨の実家へ初めて訪問した私は、後日ご両親へお礼状を送った。
 内容を意訳すると、『この前はお邪魔しましたー、将由(まさよし)くんはお仕事がんばってまーす、お土産ありがとー』といった、ごく一般的なお礼状だったのだが、三日後に食べたカステラがあまりにも美味しくて、それについてもお礼状を出したのだ。

 先に出したお礼状はボールペンで書き、カステラのお礼状は筆で書いた。カステラが美味しくて、その気持ちを毛筆で(したた)めた書状はまるで果し状のようになってしまったが、私は送った。

 私は幼い頃から習字を習っていて字は上手い。
 母が私に習字を習わせた理由は、『女はね、家が綺麗で字が上手いとそれだけで信用されるから』と言っていた。
 母に言われた通り家も綺麗にしているが、母はリビングダイニングにトレーニングマシンしか無いのは違うだろう、と言いたそうな顔をした。だが綺麗である事には違いは無いから、私は問題ないと思っている。

 デカくて可愛げのない狂犬の私は、足が速い事と字が上手いおかげでマイナス評価にならずに済んでいる。ありがとう、お母さん――。

 だが、果し状みたいなお礼状を受け取った葉梨のご両親も私を評価して下さったせいで、また私は葉梨ヒストリーの続きを聞くハメになっている。

 ――果し状はやめておけば良かった。

 大きくなったウニちゃんは私の膝の上でひっくり返り、お腹をこちょこちょされ待ちの可愛い顔をしているが、こちょこちょしたら帰りたいと思った。

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