ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 いつものお座敷に入りコートを脱いでいると、三人はコートを脱ぎながら私を見ていた。葉梨は目を彷徨わせている。なぜだろうか。赤いワンピースは派手だったのだろうか。

「なに?」
「あの、俺ら、ビールでもいい?」
「うん」

 そう言った岡島は女将さんに「俺らビールで!」と元気に言った。

 ――おそらく瓶、だろう。

 この居酒屋は岡島ではない誰かの息が掛かってる店だ。だが、それを私は知ろうとはしない。多分、知ってはいけないと思うから。
 この女将さんは信頼出来る女性、私はそれだけで良い。

「蟹あるよ? どう?」

 女将さんは次々とおすすめメニューを言うが、全てに共通するものがある。

 ――食べるのが面倒なメニュー。

 そうか、葉梨を試しているのか。
 だが、既に葉梨はそれに気づいている。

 ――使える、かも。

 性差はあれど、警察官としての仕事は同じだ。岡島が葉梨を仕込めと言ったのは私が女だからか。

 ――何事も経験だ。私も葉梨も。

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