ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第24話 フォーリンラブと噂話と御曹司と

 十二月十九日 午後八時五十分

 私は今、サンドバッグに蹴りを入れている。

 蹴りを入れてもびくともしないサンドバッグだが、私は岡島に蹴りを入れている想定で蹴りを入れている。いつか来るであろうその日の為に私は頑張っているが、足が痛い。こういう場合はどうすれば良いのだろうか。ネットで調べるか、そう思った時だった。キッチンとダイニングを隔てるカウンターに置いたスマートフォンが鳴った。
 すぐさま画面を見ると、岡島からだった。

 葉梨の妹の麻衣子さんの件は、やはり葉梨の妹だから岡島は嫌がっていた。だが麻衣子さんは岡島のタイプから大きくは逸脱していないらしく、葉梨の妹でなければ良かったと言うから、私は一度くらいデートしてみたらと言ったが、嫌だと言っていた。

「もしもし」
「あ、奈緒ちゃん? 俺だけど」
「どちら様ですか」
「冷たいなー、直くんだよー」
「で?」

 岡島の話は相変わらずくだらない。
 重要な話は二割のままで比率が増える事は無かった。だが岡島は重要な話の要点を先に言うようになったから、私は最初だけしっかり聞けば良くなった。進歩はしている。

「葉梨と山野の話と、野川と須藤さん」
「山野?」
「うん。葉梨が山野にフォーリンラブ」
「ええっ!?」

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