ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 花売り場で、真剣な表情で花を見つめている須藤さんの瞳に色とりどりの花が映っている。須藤さんは真剣な眼差しで花を選んでいたとお相手の女性に教えてあげたいと私は思った。
 だが、視界の端に岡島と葉梨がいる。邪魔な奴らめ。当然だが、須藤さんも気づいていた。

「須藤さん、チンピラと葉梨はどうします?」
「呼べ」

 私は振り向いて二人を手招きした。だが二人は警戒している。

「来ませんよ」
「もう!」

 須藤さんが手招きすると、二人はしぶしぶやって来た。だが警戒を解かない岡島の頭を引っ叩いた須藤さんは、食事を奢るから黙ってろと二人に言った。
 二人とも要求を飲んだが、岡島はなぜ私たちがデパートの花売り場にいるのか聞いてきた。だがその質問に須藤さんは無視したから、仕方なく私が答えようとした。

「須藤さんのこ痛たたたっ! やめて須藤さっ……爪! 爪!!」

 須藤さんにパワハラされる私を見慣れている岡島は無表情だが、狂犬加藤がパワハラされている姿を初めて見た葉梨は驚いて岡島の後ろに隠れた。

 ――岡島よりデカいから丸見え。

 その時、須藤さんの仕事用のスマートフォンが鳴った。私たちから少し離れて応答する須藤さんの表情を見ていたが、少し、目付きが変わった。
 こちらを向いた須藤さんは岡島を呼び、電話を終えると話し始めた。隣りにいる相手にしか聞こえない発声法で二人は話している。

 岡島はこちらに戻って来たが、須藤さんはまた電話を取り出した。

「奈緒ちゃん、須藤さんが花束を買っておいて欲しいって」
「うん、わかった」

 そしてまた岡島は須藤さんの元へ行った。岡島のハンドサインは『葉梨はここにいろ』だった。

「葉梨、花束を買おう」
「はい」

< 154 / 257 >

この作品をシェア

pagetop