ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 花売り場の中にいた女性店員に声を掛け、薔薇の花束をお願いした。

「何本に致しますか?」
「本数によって意味が違うんですよね?」
「ええ、そうです」

 店員は薔薇の色と本数の意味が書かれた紙を見せてくれた。

 ――色にも意味があるのか。知らなかった。

 色は赤が良いと思うが、白も良いかも知れない。本数はどうしようか。
 隣の葉梨も紙を見ている。
 男の葉梨に決めてもらう方が良いかと思い、葉梨を見上げた。

「あのさ、自分は相手が好きなんだけど、相手は……まあ、自分に悪い印象は持っていない女性に渡す薔薇の花束、葉梨なら何本にする?」

 私はそう言って、葉梨に紙を渡した。
 葉梨はものすごく真剣な表情で見ている。

 ――山野の件はどうなったのかな。

 その件は岡島からの情報だから、私は葉梨に聞く事は出来ない。だが岡島と同様に私だって心配だ。

「加藤さん、色は赤だと決めているんですか?」
「うーん、赤が良いかなと思ってるけど……」

 葉梨は白が良いと言う。
 白い薔薇には、純粋、あなたにふさわしい、相思相愛などの花言葉がある。これに本数の意味を合わせる。

「本数は?」
「一本か七本、うーん……五本、ですね」

 薔薇五本の意味は、『あなたに出会えて嬉しい』だ。七本は『ひそかな愛』で、一本は『あなたしかいない』だ。

「悩むね」
「そうですね」
「ま、この話は秘密にね」
「はい。分かっています」

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