ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 中山さんはいつものソファ席に案内され、葉梨は魑魅魍魎に両腕を掴まれながらソファ席に連行されていた。

「あらやだ。ゴボウもいるー、おひさー」
「ご無沙汰しております」
「ゴボウはお客様なんだから敬語じゃなくていいのにー」

 ――客をゴボウ呼ばわりはいいのか。

 ママから好きな席に座るよう言われた私は二人がいるソファ席が見えるカウンター席に座ると、魑魅魍魎に囲まれてボディタッチというか全力で胸を揉みしだかれている葉梨と目が合った。

 ――将由坊ちゃま、がんばれ。

 葉梨の姿に笑う中山さんはあの時と同じ笑顔だ。夏の任務後に葉梨を呼んだ時と同じ笑顔だった。

 私はここのフードメニューが好きだ。痩せの大食いの私の為にキッチンのスタッフさんが次から次へといろんな料理を持って来てくれるので、毎回カウンター席に座っている。
 だが今日は中山さんのお誕生日会だ。乾杯だけはソファ席に行こうと席を立ったが、中山さんと体格の良い葉梨と四体の魑魅魍魎でソファ席はみっちみちだった。
 仕方なくソファの隅っこの脇に立っていると中山さんが手招きした。それを見た魑魅魍魎は空間を開けようとして、四体の中では一番小柄な魑魅魍魎が葉梨の膝に座った。そして残りの魑魅魍魎はそれに抗議している。

 ――楽しそうで何よりだ。

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