ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 松永さんと仕事する前から弟さんの美容院には行っていたが、松永さんはヘアメイクの指導を弟さんに指示して、私は習った。
 化粧下地、ファンデーション、アイシャドウにマスカラ、チーク、口紅、そして付随するメイク道具。こんなに必要なのかと驚いた。髪だってそうだ。アイロンもだが、カラーやパーマヘアにするとシャンプーやトリートメントも専用のものが必要になる。金がかかるじゃないか。私はそう思った。

 出費は貯金で賄ったが、これから先も出費があるのかと思うと無理だと思った。
 そこで松永さんに相談した。お金が無いですと正直に言うと、暫く思案した松永さんは私をデパートに連れて行ってくれた。

 私はその日、アイラインを引く時に手元が狂い、それに合わせてメイクをしたら濃くなり、顔と服装が若干チグハグになってしまった。
 待ち合わせ場所には胡散臭いサラリーマン風の松永さんがいて、チグハグな私の姿に少し困惑していたが、濃いメイクの私を「いいね、良く似合ってる」と褒めた。
 デパートで松永さんは店員に、「この子のヘアメイクに似合った服をコーディネートして。五日分、予算十五万で」と伝えた。その後、買った服に似合う靴とカバンも買ってくれた。
 松永さんは美容院とメイク代として現金もくれた。服と靴とカバン、そして現金で総額五十万円だった。

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