ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 午後九時四十七分

 私は今、リビングで缶ビールを飲んでいる。

 いつもは髪にタオルを巻いたままリビングに戻るのだが、今日は風呂から出てそのまま髪を乾かした。
 女子力がアップした気になるがパンイチ――。
 今日もやはり女子力皆無だなと思いながらビールを飲んでいると、スマートフォンが鳴った。葉梨だった。

「もしもし」
「葉梨です! こんばんは!」

 四月の予定は既に立てたのだが、葉梨の都合が悪くなりキャンセルとなっていた。改めて連絡すると言っていたから、その件だろう。

「四月の十七日はいかがでしょうか?」
「あー、うーん……いいよ」
「……ご都合が悪いですか?」

 その日は予定が開けられるのだが、問題は日付だ。四月十七日は私の誕生日だ。
 誕生日当日に予定が空いているアラサー女なんて、ちょっと哀しいじゃないか。だが仕事なのも哀しい気がする。

 ――私は三十四歳になる。

 相澤が結婚したら諦めると決めてここまで来てしまった。相澤は結婚していないが、もし結婚していたら、私は今、何をしていただろうか。誰かとお付き合いしていただろうか。その誰かと結婚していただろうか。
 でもやっぱり、私は結婚するなら裕くんが良い。裕くん以外の男なんて、考えたくも無い。

「ううん、大丈夫だよ」
「では四月十七日にしましょう!」
「私、誕生日なんだよ、その日」
「えっ……」

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