ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 会計を済ませ、女将さんと大将に挨拶をして店を出た。

 ――お気に入りのお店だったんだけどな。

 少し、嫌な気持ちになった。
 それを見透かしたのか、岡島は相澤と肩を組んで先を歩いて行った。ゴリラと普段着のチンピラの向こうに人がいる。前方にいたその人は道の反対側へ行った。良い判断だ。二人は警察官だが。

 葉梨と私は取り残されたが、私は葉梨に連絡先を聞かなくてはと思い、言った。

「連絡先教えて」
「えっ……」

 見上げる葉梨は不安そうな顔をしている。なぜだろうか。

「あのさ、今後は二人で会おうよ」
「えっ!?」
「いろいろ教える」
「……はい」

 葉梨は相変わらず不安そうな顔をしているが、岡島が言う通りだった。葉梨は私を女として見ていない。私にとっては良い事だ。ただの先輩と後輩――。

 電話番号を言う葉梨の声を聞きながら、私はスマートフォンを操作して、電話をかけた。
 メッセージアプリのアカウントは後日で良いだろう。

 ◇

 葉梨は官舎に戻った時間だと思料される時刻にショートメッセージを二通送ってきた。
 今日のお礼と、メッセージアプリのアカウントIDが書いてあった。

 私はすぐにメッセージアプリで葉梨を検索するとアイコンが可愛い犬だった。ふわふわした毛の、名は何だったか。
 思わず頬が緩んだが、私は「おやすみなさい」とだけメッセージを送った。


< 18 / 257 >

この作品をシェア

pagetop