ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第31話 年下男と職人技と小綺麗な熊と

　四月十七日 午後六時五十七分

　今日は私の誕生日で、葉梨とホテルのフレンチに行く予定だ。
　自宅まで車で迎えに行くと言われたが美容院へ行くからと断った。指定された地下鉄の駅前で待ち合わせする事になっている。

　先週、葉梨からフレンチに行きましょうと連絡が来た。そのホテルはそこそこのランクのホテルで、どう考えても会計が庶民価格でないことは確かだった。
　誕生日だからご馳走すると言う葉梨へ、そんな高級ホテルで食事などダメだと言ったのだが、葉梨は行くと言った。一歩も引かず、ずっと「いいんです、大丈夫です」と言っていた。

　三日前、私はデパートに行った。
　招かれた高級ホテルに見合った服が無く、せっかくだからと新調しようと思ったのだ。従兄弟が結婚するらしいとは聞いているし、結婚式にも対応出来るワンピースを買おうと思った。

　店員に野川が選んでくれたリボンのカチューシャを見せ、ホテル名を伝えて、ホテルのランクに合うワンピースを選んでもらったのだが、店員からほんのり疑いの眼差しを向けられた。
　婚活中のアラサー女がリボンのカチューシャを着けて婚活パーティに行くとでも思ったのだろう。世間話のつもりで「後輩が誕生日会を開いてくれる」と言ったのだが、『年下男狙い』と脳内変換されたようだった。