ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 だがあちらもプロだ。
 私の体型に見合ったワンピースを二着選び、こう言った。

「しなやかな大人の女性を演出するならこちら。大人の女性が併せ持つ愛らしさを演出するなら、こちらが良いと思います」

 どちらも私の手持ちのワンピースには無いタイプだった。私は両方欲しいと思ってしまったが、二着も購入するのは無理だった。
 その時、ふと相澤の顔が思い浮かんだ。
 相澤なら可愛いワンピースが良いと言うだろう。だから私は清楚系のワンピースを買うことにした。

 ピンクの総レースのワンピースは、袖が肘下まで覆う緩やかなシフォンスリーブで、腕を曲げると二の腕まで肌が見える。品の良い大人の肌見せだと店員は言っていた。

 今日の午後は松永さんの弟さんの美容院へ行き、このワンピースと野川とお揃いのカチューシャに似合ったヘアセットをお願いした。

 普段とは違う服で、誕生日当日の平日に現れた私を見た弟さんは、何か言おうとして飲み込んで、言った。「兄には、今日のご来店は秘密にしておいた方が良いですか」と。

 弟さんも、婚活で足切りされるラストイヤーである三十四歳を迎えた私が、気合い入れて婚活パーティにでも行くのだと思ったのだろう。言っても言わなくてもどちらでも構わないのだが、弟さんの思いやりを無下に出来るはずもないから、秘密にしておいて欲しいと伝えた。

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