ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
第34話 花束といい男といい女と
マティーニを一気に飲み干す私を葉梨は見ている。
「加藤さん、すみませんでした」
「謝罪は受けた」
「でもあの、本当にすみ――」
「殴るよ?」
正面のガラスに映る葉梨は、ドッグランに行くと車に乗せられたのに着いたのは狂犬病予防接種会場だったマロンと同じ顔をしている。しょんぼり葉梨――。
だが私は思った。
年下男に言い寄られるなんて、私もまだまだイケるのだ、と。
「ふふっ……葉梨、ありがとう」
「えっ?」
「バースデーディナーでさ、年下男にそんな事を言ってもらえるなんて、私もまだまだイケるって思わせてくれてありがとう。おかげで最高の誕生日になったよ。これがプレゼントなんでしょ?」
「そんな……」
「ありがとうね、すごく嬉しいよ」
葉梨は黙ってしまった。
私は忘れようと思う。この件は、誕生日の夜に予定が空いている年上の独身の先輩へのリップサービスなのだ。葉梨はジェントルポリスメン、そう思えば良い。
「葉梨様、御用命のお品をお持ちいたしました」
振り向くと白い薔薇の花束をトレーに載せたウエイターがいた。
「加藤さん、すみませんでした」
「謝罪は受けた」
「でもあの、本当にすみ――」
「殴るよ?」
正面のガラスに映る葉梨は、ドッグランに行くと車に乗せられたのに着いたのは狂犬病予防接種会場だったマロンと同じ顔をしている。しょんぼり葉梨――。
だが私は思った。
年下男に言い寄られるなんて、私もまだまだイケるのだ、と。
「ふふっ……葉梨、ありがとう」
「えっ?」
「バースデーディナーでさ、年下男にそんな事を言ってもらえるなんて、私もまだまだイケるって思わせてくれてありがとう。おかげで最高の誕生日になったよ。これがプレゼントなんでしょ?」
「そんな……」
「ありがとうね、すごく嬉しいよ」
葉梨は黙ってしまった。
私は忘れようと思う。この件は、誕生日の夜に予定が空いている年上の独身の先輩へのリップサービスなのだ。葉梨はジェントルポリスメン、そう思えば良い。
「葉梨様、御用命のお品をお持ちいたしました」
振り向くと白い薔薇の花束をトレーに載せたウエイターがいた。