ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第38話 生クリームと心理戦とマスコットと

 六月三十日 午後一時十五分

 私は今、チョコバナナパフェを眺めている。

 岡島からバレンタインのお返しとしてスイーツブッフェにまた行こうと言われたのだが、岡島は取りに行くのは恥ずかしいからパシリとして葉梨を連れて行くと言った。私は葉梨をパシリとして扱うのは可哀想だと思い、パシリとして野川を連れて来た。

 野川はパシリとしてよく働いている。だが、ポンコツ野川はスイーツの盛り付けもポンコツで私たち三人は困惑している。

 岡島がお気に入りの『ブラウニー〜生クリームを添えて〜』は、ポンコツ野川は気を遣ったのかブラウニーと生クリームを交互に五段重ねにした。だが、席に戻る間に倒壊して無残な姿になっていた。
 葉梨はパンケーキにチョコレートソースをかけたものを頼んだが、「葉梨さんはこっちの方が良いです! 可愛いです!」と言って、手で溶けずにお口の中で溶ける外国のチョコレートを適当に散らしたパンケーキ六枚を持って来た。

 ――素パンケーキ〜カラフルチョコを添えて〜

 そして私はチョコバナナパフェを頼んだのだが、野川は最初に入れるシリアルの目測を見誤ったのだろう。小さなパフェグラスの八割がシリアルだった。
 その上に申し訳程度の生クリームが乗り、二切れのバナナがぶっ刺してある。
 そこにポンコツ野川はチョコレートソースをかけようとして失敗し、パフェグラスを持つ手までチョコレートまみれにして席に戻って来た。

 ――シリアル〜牛乳が無いから生クリームで〜

 ポンコツ野川の自分のスイーツはケーキがてんこ盛りだ。
 チーズケーキ、ショートケーキ、チョコレートケーキ、フルーツタルト、そしてなぜかバナナのみ三切れ。

 野川がケーキをモシャモシャ食べる姿を私たちは眺めているが、各人は自分の手元にあるポンコツスイーツをいかに満足度の高い方法で食べ切るか、心理戦が始まっている。

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