ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 私は生クリームをスプーンですくい、口に入れた。濃厚な生クリームとチョコレートの味と香り、そしてひんやりとした食感。美味しい。
 だが、戦いはここから始まる。
 正面にいる岡島は私の一挙手一投足を見ている。

 岡島は自分の生クリームを野川の隙をついて私のパフェに乗せようとタイミングを見計らっている。『ブラウニー〜微量の生クリームを添えて〜』を食べながらだが、仕事の時の顔で私を見ている。そんなんだからプライベートでも警察官だとバレてしまうのにとは思うが、今は置いておく。
 葉梨は手で溶けずにお口で溶けるカラフルチョコレートを手掴みで食べている。これは伏線なのか。

 こんな心理戦などせず、さっさと野川に指示して再度持って来させれば済む話なのだが、それではハラスメントになってしまう。
 私も岡島も、若い時にさんざんされた事、何なら今でもされている事を、次世代に引き継いではならないのだ。

「ねえ野川。あの観葉植物の名前は覚えてる?」

 私は野川の八時方向にあるモンステラに野川の視線を誘導させた。今だ。岡島、やれ。
 岡島はスプーンで生クリームをすくい、持ち上げた。私はパフェグラスを岡島の皿に近づけ、生クリームを待つ。

「モンブラン!」
「だいたい合ってる」

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