ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 岡島は今日、初めて野川のポンコツぶりを目の当たりにした。
 最初のうちは野川の小動物的な可愛らしさに頬が緩んでいたが、時間を追う毎にポンコツっぷりを目の当たりにして、これまで得ていたポンコツ情報と整合性が取れたのだろう。唇を噛み締めていた。

 ――早く。早く生クリームを。

 私が焦ってちらりと横目で見ると、岡島は生クリームを皿に落とした。

 ――この不器用なチンピラめ。

 私はパフェを引き寄せ、何も無かった事にした。
 だがそれを見ていた葉梨がパンケーキを手掴みして生クリームの上に乗せた。隠蔽作戦――。
 向き直った野川は斜向かいの岡島の皿を見て、皿の端にあるパンケーキに気づいた。

「あ、岡島さんはパンケーキもらったんですね! 私もブラウニーが欲しいです! チョコレートケーキ半分あげます!」

 私、岡島、葉梨。
 三人の視線がぶつかる。
 そうか。最初からそうすれば良かったのか。
 岡島の『ブラウニー〜生クリームを添えて〜』は五段重ねだ。岡島が三人に分ければ良かったのだ。

 ――ポンコツは、私たちだった。

 だが私は思った。
 葉梨はこれを計画していたのではないのか。
 賢い葉梨だ。それくらい頭が回るだろう。
 私はちらりと葉梨を見た。
 葉梨は正面の野川を見ている。
 目を見開いて、見ている。

 ――葉梨も、想定外だったんだな。完全に。

 私はシリアルを食べられるだけ食べて、口の中をモッサモサにしながら、野川に微笑んだ。

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